2017年 04月 11日
楽水流「乙女とシャンペトル 2」
・ビオラ"気まぐれロージー"
・パンジー"ミュシャ"
・ジャノメエリカ
・チロリアンデイジー
・レインボーファーン
・ヒューケレラ"コッパーカスケード"
・フェンネル
朝から風が強く、雨。
しかし今のところ春に相応しい優しい雨で、街の桜も散り急ぐこともないだろう。
先程、月が満ちた。
四月の望月はピンクムーンと呼ぶらしい。
春らしい響きだ。
天気がこの調子では月は望めそうにないから、深海魚のように、夜は夜気の底でゆったりとたゆたおうか。
春の花が奏でる旋律を、この柔らかい湿度で包んで。
そう言えば今朝、百合の開花の瞬間を目にした。
音をたてて内側から弾かれ、花びらが一ひらほころんだ。
花の誕生の瞬間に立ち合ったような気がして、顔を近づけておめでとうと囁いておいた。
去年の今頃、君はどんな感じだっただろうか。
あの頃より更に、夢の暮らしに近付いたりして。
まぁ、その分慌ただしくもなる。
君が定めた準備期間の残りを、味わうように暮せばいいのさ。
この街だからこそ出来る事もあれば、憧れの暮らしには足りない事もある。
けれど、今はこの街に居る。
そして、この街で生活をしている。
君のようにバイタリティーに溢れるタイプは、あの地の気が強い土地にはすぐに馴染むだろう。
振り返ればいつか、この今の暮らしはすっかり懐かしく形を変えて、何だか長い夢を見ていたように感じる時が来るのだろうよ。
先日の、あの里の花見会。
曇天の下よく分からないままに時間は過ぎ、話に聞いていたN男にも初めて会った。
N男に、あの時写真を提供した者だと名乗ると、意外な顔をしていた。
こんな奴だとは思ってなかっただろうと聞くと、思っていなかったと僕の髪色を見て固まっていた。
失礼な奴だな、こんな奴ってどんな奴だよ。
全く笑える。
見た目で判断するのはつまらない。
しかし、時には見た目通りの物事もあったりする。
例えば、花のその美しさ。
花は飾りも誤魔化しもせず、ただ全力で表現している。
まぁ、食虫植物のように罠を仕掛けるタイプもあるけど。
皆、それぞれだ。
違って当然、その自由さが楽しい。
だから君も、つまらない事を言われてもそのままいけよ。
ただし、風呂ではうっかり寝ないように。
時は春、清明の半ば。
また今宵その空を望月が照らし、生憎の雨でも空想の中で夜桜が月明かりに浮かび上がる。
いい時に生まれたもんだな。
美しい、春の最中に。
乙女の君は、ジャンヌダルクのような熱さを心に秘めてさ。
誕生日おめでとう。
静樹へ
by tuchinoko-sha
| 2017-04-11 16:24
| 楽水流