2017年 05月 09日
「Mayo de la canción de inserción」 / 詩
アザレアの側は 甘やかな香り
乾いた風の輪郭は 丸く
地表のあちらこちらで
小さなつむじ風が 螺旋を描き
大地の奥から外の世界へ
初夏のエッセンスを送り出す
そのようにして
世界は少しずつ 熟れてゆく
騒ぐ風
微かに 蜂蜜の香り
鮮やかな緑と
下草のときめき
あのパン屋のマダムに
カスクートの秘訣を訊ねると
「シンプルにね、こつこつと挟んでいくの」
なんて答えそうだなと
ふと思い出した いつもの神妙な顔
今日もサウダージのヴェールを纏っているかと
ぼんやりと
風の中で空想する
旅立つ種子へ
鳥たちからのファンファーレ
クローバーのお喋りと
池の中から響くウシガエルのバス
陽光にきらめく
大気中の微粒子も
さざ波を作り 草花を覆う
Mayo de la canción de inserción
重なり合う 数々の旋律
絶え間なく ささやかに
ミルフィーユのように層をなして
世界に溢れる 5月の挿入歌
散らばる音符を運ぶ風
丸みのある
蜂蜜の香りの風が 世界を吹き抜ける
by tuchinoko-sha
| 2017-05-09 18:41
| 文芸系