2018年 01月 21日
「地球照」/ 詩
キッチンに
檸檬と林檎が 点在して
何気に暮らしてるよ
静かな音をたてながら
言葉を選ぶように
何時ものように 丁寧に君は語る
そんな君は 珍しく
静かに怒っているようだった
「つい、そうじゃないと反論したくなるんだ」
そう言ってた君
ありがとう 僕に関する事柄で
そんな風に思ってくれて
僕は救われた気分さ
君が僕を庇おうと 気分を害した代わりに
僕は 君の気分を良くしたい
だから何時ものように
つまらない話で 笑わせるんだよ
「よい香りの部屋だね」
「あの蝋燭だよ」
冬には バニラの香りが好ましい
君も気に入ってくれて なにより
君が来るから
まだ明るいうちから 密かに灯していたのさ
段々と薄暗くなって
床を滑るのは コントラバスの音色
「最近弾いてる?」
「近頃はあんまりなんだ」
二人とも物静かにして
あまり 空気は揺るがず
「何だか眠ってしまいそうだよ」
「それもいいね」
机の上に
食べかけの苺と 紅茶
凪いでいる二人
黙って撫でられる髪
汽水と海水が交じる地点
そんな風に
自由さと柔軟性を以て
心に 伸びやかにしていたい
君と会った翌朝は
とても軽い心で目覚める
でも此度 僕は不思議な夢を見た
夢の中で 目についた知らない漢字
見たことの無い一文字を 夢の中で調べ
するとその文字は
「真珠が採れる場所」
という意味らしかった
また真珠だよ
続くインスピレーション
なんでも 海の深いところ
鉱石の採掘のような雰囲気で
特別な真珠を採取する場所らしい
僕は 見つけられるだろうか
いや
もう 見つけているのかも知れないな
日が落ちて 駅まで送りがてら
「細い月が出ているね」
君の言葉に空を仰げば 朔からの三日月
僅かに白く 輪郭が浮かび上がる
「ご覧、地球照だよ」
「地球照って何?」
「この星の照り返しさ」
そんな話をしながら
靴音もまろやかに 歩んだ
今宵も ほんのり地球照
月が地球の照り返しを浴びるように
君という星の光で
僕という星は 光ってもいる
独自の軌道を描きながら
気侭に でも神妙に
懐かしい君の光は
冬の日の蝋燭のように 穏やかに暖かい
by tuchinoko-sha
| 2018-01-21 21:05
| 文芸系