2018年 05月 10日
「水際と情景」/ 詩
ふらふらと歩んで
彷徨うように 情景を切り取る
あちこちの水際で僕は
しばし その世界を覗き
やがて また歩み始めて
また水際を吹き過ぎる風は
潤いを懐にしまい込み
新しい地点へと旅立ってゆく
この世界に 潤いを
萎れた心に その潤いを
街では明日にも
陽光を集めたような ヒペリカムが咲く
その後に
純白のベルベットのような クチナシの花
芳しい香りが
つむじ風のように 街を駆け抜けて
風は受粉を担う蜂のように
忙しなく 行き来するだろう
朧に立ち現れる壁は
じわじわと
存在感を増して世界を塞ぐ
小さな世界で
此処と其所を
秘められた世界の
其所と此処を
夜空に留められた
銀のカラスを解き放とう
アポロンは ヒペリカムになって笑えばよい
水際を巡ってやって来た風に
柔らかく撫でられるとよい
南に瞬くサソリの心は
赤く 夜の倍音を奏でる
壁は草となり
懐かしく思える水際
あの日耳にした 瀬音を感じながら
その側で花を見る
見せたい様々な情景に
共に眺めたいと君は応え
やはり共に眺めたいと
僕もまた応える
水際を旅してきた風が
心地よく 吹き抜ける
萎れた花がもち直すように
水際を目にしてきた僕は
惹かれる情景を 切り取り
萎れた花が顔を上げるように
しばし その世界を眺め
やがて また歩み始める
by tuchinoko-sha
| 2018-05-10 22:55
| 文芸系